飴
作:白樺クウフク 1家庭図形 長い間、母の言葉が耳に響く。それは飴をなめる時、ふと思い出す。母がよく、「歯磨きしたら飴をなめてはいけない」と、寝る前に私に呟く。寝る際ほの見る母の顔はたしか、綿のような白皙の肌をしていて、暗い部屋を微かに照らすようだった。私とは似ていた顔だけれど、美しくもなく醜くもなく、ただの見慣れた顔でもあった。なのに、上下の前歯がない。死んでから間もなく、父がある日突如思い出したように曰く:「母は小さいころよく飴をなめてたからだ」と。 私は飴と母の繋がりがつくづく実感し、そして、溶けかけの飴を齧るように母のことを思い出す。 母とともに過ごしてきた記憶の大半は病室にある。地元では一番いい病院だと先生は言っていた。その病室はベッド六つに整斉と並び、その間に知らない医療機材やニ三人が通れるほどの空間がある。母のベッドが窓側の一番近い位置にあるが、病室が北向きのせいか、日の光が当たらない(それでも、病室はいつも明るい)。病室はもうニ三回変わることになったが、この病室は母が居た最後の病室である。雪まではふらないが、外の白樺の枝に葉が寒気に耐え切れずとっくに落ちている。